2020年6月22日
OECD(経済協力開発機構)が、世界の15歳の生徒に対して行った国際的な学習到達度調査(PISA)によると、日本の生徒は、オンライン上にあるWebサイトや投稿文、電子メールなどの多様なデジタルテキストから、必要な情報を探し出し、情報の質と信憑性を評価し、矛盾を見つけて対処するといった能力が、十分に育成されているとは言えない結果となりました。
また、日本における学校の授業において、デジタル機器の利用時間は短くOECD加盟国中で最下位であり、日本の生徒は学校外では多様な用途で利用しているものの、チャットやゲームに偏っている傾向があり、デジタル機器を活用して宿題や学習する頻度が乏しい状況であることも明らかになりました。
IoTやAIなどの最新技術を活用し、経済発展と社会的課題の解決をめざす新たな社会である、Society5.0の時代を生きる子供たちにとって、ICTの活用は不可欠なものであり、情報を活用する能力を育成する点で、日本が立ち後れている現状を変えていかなければなりません。
このため国では、令和元年度補正予算において、学校現場のICT化を推進する「GIGAスクール構想」実現のための経費が計上されました。これは、児童生徒に一人1台のノートパソコンやタブレット端末を配備し、高速大容量の通信環境の整備を支援するものです。
教育のICT化は、社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げるほか、特別な支援を必要とする子供達の学びを支える有効な手段となるだけでなく、さまざまな理由で学校へ行けない子供達への学習機会の確保にもつながります。
さらに、災害や感染症の発生による学校の臨時休業など、緊急時における子供達の学びの保障に欠かせないことから、国の令和2年度補正予算案においても、一人1台端末の早期実現や、家庭学習のための通信環境の整備など、「GIGAスクール構想」を加速整備する内容が盛り込まれています。
▼GIGAスクール構想の実現について:文部科学省▼
本県においても、さまざまな子供達の状況に応じた「誰一人取り残さない教育」が行える環境づくりが急務となります。そこで、GIGAスクール構想の実現に向けた、県内市町村の令和2年度の補正予算に関する申請状況と、国が行った児童生徒の家庭におけるICT環境等の調査結果を伺いました。
GIGAスクール構想では、一人1台端末及び高速大容量の校内ネットワークの整備を進めることとなっており、5月17日の時点では、一人1台端末に係わる補助金は52市町村が、ネットワーク整備に係わる補助金は49市町村が申請しているようです。さらに、今年度の補正予算に計上された関連事業のうち、遠隔学習を行うためのカメラやマイク等の通信機器の整備は22の市町が、モバイルルーターの整備は36の市町が、ICT技術者の派遣は19の市町村が申請しています。
一方、家庭でインターネットに接続して学習することができない県内の児童生徒は、公立小学校で約11%、中学校で約8%、高等学校で約1%、特別支援学校で約7%でした。ICT機器の整備やオンライン学習については、これまでにも自治体によって取り組みの格差が生じています。これらのデジタル格差を放置すれば、結果的に社会に深刻な分断を招いてしまう恐れもあり、この機会に格差是正に取り組む必要があります。
ICT機器の整備やオンライン学習については、これまでにも自治体によって取り組みの格差が生じています。これらのデジタル格差を放置すれば、結果的に社会に深刻な分断を招いてしまう恐れがあり、この機会に格差是正に取り組む必要があると考えます。高等学校はGIGAスクール構想による端末整備の対象ではありませんが、だからこそ生徒一人ひとりに向けたICT環境をどのように整備し、学びの保障につなげていくのか、県の教育姿勢が問われます。そこで、県立学校、特に高校生向けのオンライン環境の整備などの投資拡大とともに、ICT教育環境先進県となるように、取り組みの加速化と強化について、県の考え方を伺いました。
県では6月の補正予算により、県立高校のすべての生徒が学習支援ソフトを活用できる経費が計上されました。このことにより、今後、校内の教育用コンピュータだけでなく、自宅でも生徒のスマートフォンなどからアクセスし、理解度に応じた学習や教員の個別指導が可能となると同時に、今年度、構内通信ネットワークの高速大容量化と普通教室での無線LANの整備を行うとともに、タブレット端末等を活用した授業の実践研究を進めることになるようです。
今や子供らは我々の想像を超えてデジタル機器を使いこなし、今後はその活用が急速に進んでいます。ICT環境の整備といったハード面だけでなく、教員の ICT 活用指導力の向上や子供達が ICT を適切・安全に使いこなすことができるようネットリテラシーなどの情報活用能力などの育成の必要性についても、併せて要望しました。
市原市 鈴木 和宏